魔王の凱旋

オリジナルの小説をちまちま書いていきます。

プロローグ

村から続く山道を、一歩一歩踏みしめて進む。生まれてから18年、この日をずっと待ち続けた。今日からやっと、俺の本当の人生は始まるんだ。

年端もいかないわんぱくそうな少年が、子どもが遊ぶ様子を優しく見守る老人に話しかける。
「なぁなぁばあちゃん!ディアブロのにーちゃんが見当たらないんだけど、どこいったか知らない?」
「おやおや、ディアブロは今日で18になったじゃないかい。やっと魔法が手に入るって、朝早くからイフリート様のいらっしゃる祠へ向かっていったよ」
「そっか.....にーちゃん今日いないんだ。でもいいなー。俺も早く魔法使えるようになりてー!!」
「もう少し先の話だね。でもまぁ、あんたにもいつか18になる日がくるさ。焦らずゆっくり待つことだね」
老人は優しい眼差しをきゅっと細めながら少年に言った。少年は少し不満そうだ。
「ちぇー。早く俺も大人になりてーなー」_____


_____これは、人々にとって魔法が身近な世界で起きた、ある青年の物語。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

むかし むかし あるところに ひとと まものが きょうぞんする ふしぎな せかいが ありました。

そのせかいを おさめるのは まおう とよばれる とてもつよく ふしぎなちからをもった ひとりの おとこでした。

じぶんが おさめた せかいは あまりにへいわで まおうは なにもすることがありません。

そんなあるひ まおうは あることを おもいつきました。

「おれの このちからで このせかいを おもしろい せかいに かえてやろう。だれもが おれと おなじ この ふしぎな ちからを つかえるように してやろう」

そうして まおうは じふんの その おおきなちからをつかい せかいを ひとを どうぶつを じぶんをも つくりかえてしまいました。

そうして なんぜんねんものむかし わたしたちの せかいは うまれたと いわれて います。
_____だれでもしってるおとぎ話  おとぎばなしのだいまおう  より_____

パタン、と音を立てて本を閉じ、本を読んでいた女性はふぅ、と息を吐いた。
「いつ読んでもめちゃくちゃな話だ」
苦笑しながらそんなことを呟く。
「まぁ、おとぎ話なんてこんなもんか」
そう言って女性はカーテンを開ける。いつもの澄んだ青空と違い、まだ午前中だというのに、真っ赤な空と、山からもくもくと昇る煙が、窓の外に広がっていた。
「なんだ.....?山が噴火している.....?」
明らかに異常な風景に、女性は不安を覚える。
普通ではありえない景色と共に、物語の歯車は廻り始めた。