魔王の凱旋

オリジナルの小説をちまちま書いていきます。

三話 ギアのトレーニング.1

「....................へぇ。そんな貴重な物を俺なんかに使ってもよかったのか?」
「問題ないよ。私は実験サンプルが欲しかった。そして君は命を取り留めた。お互いに損は無いんだ」
「損.....か。俺にはもう帰る場所が無いから、死んだままでもよかったんだがな」
「ああ、そうかすまない。これはwinwinな関係なんかじゃなかったね」
そう言ってミラは、右手の人差し指をピンと伸ばして続ける。
「私は君に住処と戦いの術をあげよう。だから君は、その能力を使って私にギアのデータをくれ。他に見返りは求めない。悪い条件ではないだろう。私に協力してくれないだろうか」
「..........その提案に乗れば、魔王軍を倒す力は手に入るか?」
「君の潜在能力と、想像力しだいだが、位の低い幹部くらいなら倒せるんじゃないかな」
「...............わかった。協力する」
「よし。君を助けて良かったよ」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「君に埋め込んだギアだが、少し他の物と性質が違ってね。細胞の硬質化の他に、形状変化なんてことができるんだよ」
俺が提案に乗ってから1時間。俺達はミラの研究室の地下にある、だだっ広い空間に移動していた。
「形状変化については君の想像力が必要なんだが、君はキャノン砲を想像できるかな?あぁ、部位については体のどこでも構わないよ」
キャノン砲.....。ぶっといレーザーが出る銃に似たものしか思いつかないが、それでいいのだろうか。
あれ、なんだか右腕からガションガション音が聞こえる。右腕を見てみると、俺が想像した通りのキャノン砲に変わっていた。
「.........................え?」
「へぇ。君はなかなか想像力が豊かなようだね。スマートでかっこいいじゃないか」
ミラが壁を指さして一言。
「ちょっとそれをぶっぱなしてくれるかい?あぁ、壁に当たったエネルギーは電気エネルギーに変換してくれるから問題ないよ」
どんな科学力だそれは。まるっきり表の世界の技術と同じじゃないか。
「撃つぞ」
ッドオォオォオォオォオン。光弾が思いっきり壁に当たって霧散した。壁は無傷だ。
「なるほど。レールガンみたいな感じで想像したのか。硬質化した細胞を無駄に消費せず、更に細胞が硬質化したときのエネルギーを魔力に変換して打ち出してるみたいだね。実に効率がいいよ」
「別にそこまで考えた訳じゃないけどな。それよりこれはキャノン砲じゃなかったのか」
「キャノン砲ってようは大砲だから、でっかい弾が打ち出されるものなんだけどね。まぁこっちの方が効率いいよ。それより、オートで魔力に変換する繊細なエネルギー操作をやってみせたんだ。君にはどうやら非凡な魔力干渉能力が備わっているみたいだね。とても興味深いよ」
なんだかミラは楽しそうな訳だが、俺としては村を襲いったあの下衆を一刻も早く追いかけたい。
「他になにかやるなら早くしてくれないか」
「..........あぁ!すまないね。君は繊細な操作が重要になるこの能力にうってつけな能力を持っていたし、そうだな、ちょっとトレーニングを前倒ししてしまおうか」
そう言ってどこからか取り出したスイッチをカチッと押すと..........。
..........上から機械人形が3体降ってきた。
「今から君にはこの機械人形を、ギアの能力を使って倒してもらうよ。私は上から傍観しているから、頑張ってくれたまえ」
ミラは素早く上の部屋へ逃げていった。
「..........いきなりかよ.....」
.....早く外に出たいんだが。