二話 ギア
「その前に私の紹介をしようか」
目の前の女性は自信たっぷりに胸に手を添え告げる。
「私の名はミラ。ミラ・ヴィータだ。先生とかミラとでも呼んでくれたまえ。さて、もう一度聞こう。君の名前は?」
「そうだね。君には話を聞く前に、まずは話さないといけないことだらけだ」
「とりあえず、場所を移そうか」
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「まずここが何処かって話だったね」
ミラと名乗った女性はくるっと一回転して話を始める。どうやら大袈裟な仕草が好きなようだ。
「私はこれでも医者でね。ここは、私の診療所、兼研究所ってところかな。君のことは、あの火山が噴火した日の次の日に、その火山で発見したんだ」
「.....俺以外に生きてた住民は?」
「いないね。みんな死んでたよ」
やっぱりか。その話を聞いた途端に、俺の俺に対する怒りが再び込み上げてきた。
「俺があの時ちゃんと村に残っていれば...‼︎畜生ッ‼︎」
「落ち着きたまえ。とりあえず、君に何が起きたか、話してもらってもいいかい?」
「......あぁ、そうだな」
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「あの日、俺は村で代々継承されてきた、固有能力を受け継ぐために、村から少し離れた祠にいたんだが、どうやらその能力を狙って、魔王軍が攻めてきたらしいんだ」
「魔王軍...か」
魔王軍とは、この世界を束ねる組織の名前だ。力のある者であふれたこの世界を統治するために、強い武力でもって各地を征圧している。
「奴らは俺がいない間に、山を噴火させ、村を溶岩で囲み、力づくで能力を奪おうとしたらしい。俺が村に戻ったときには、みんな...死んでいた」
「これが俺がここで目覚めるまでの全てだ」
俺は少し間を空けて言葉を続ける
「俺も魔王軍に胸を貫かれたはずなんだが、何故生きているんだ?」
「それについては、どこから話せばいいかな」
「君は、『ギア』って知ってるかい?」
「ギア?...聞いたことないな」
「ギアっていうのは、近年各地で見つかった、『1人につき1つしか無いはずの、どれか1つの属性固有能力に、もう1つ能力をプラスする』といういわばオーパーツなんだ。私は『体の細胞を鉄のように硬くし、また武器などに体の一部を変形させることができる』というギアを持っていてねーーーーー」
「ーーーーーーすまない。君を助けるために、君にこのギアを埋め込んだ」